FXで押さえておくべき経済指標一覧!発表後に値動きが激しくなる理由とは?

FXの基礎知識

FXで継続的に利益を出していくためには、経済指標に対する理解を深める必要があります。

経済指標が発表されると、為替相場は一時的に大きな影響を受けることがあるためです。ただ、経済指標の種類は多岐にわたるため、全てを把握して備えておくことは現実的とはいえません。

そこでこの記事では、FXのトレードをする上で知っておくべき経済指標を詳しくまとめています。また、経済指標の発表後に値動きが激しくなる背景や、経済指標時にトレードすべきでない理由についても、FX初心者にもわかりやすく解説しています。

トレードにおける分析の基礎はあくまでもテクニカル分析で行うべきですが、経済指標を組み込んで考えることで、トレード成績はより安定していきます。

この記事でわかること
  • 経済指標発表があると相場の状況が急変することがある
  • 経済指標の中でもアメリカの指標は重要度が高い
  • 経済指標前後の動向には多様なトレーダーの思惑が絡むため読み切ることは難しい

なぜFXでは経済指標が重要といわれるのか

経済指標とは、その国の経済活動状況を表す統計データであり、言い方を変えれば国の経済についての健康診断です。

雇用や景気、物価などが数値で表される経済指標は、結果次第でその国や地域の金融政策に影響を与えることがあります。さらには為替レートに大幅な変動を起こす場合もあるため、特に注目度の高い経済指標はトレード前にあらかじめ確認しておくことが大切なのです。

アメリカの経済指標は特に重要度が高い

経済指標の中でも、アメリカの指標はFXトレーダーとして見逃せません

アメリカはGDP(国内総生産)世界第1位を誇る経済大国で、為替市場では基軸通貨にもなっています。そのため、為替市場においてもEUR/USD(ユーロ/ドル)やUSD/JPY(ドル/円)など、米ドルが直接絡むドルストレートの通貨ペアは取引量が多く、アメリカの経済指標の影響を受けやすくなっています。

また、米ドルが直接絡んでいないEUR/JPY(ユーロ/円)などのクロス円ペアでも、実際にはEUR/USD(ユーロ/ドル)とUSD/JPY(ドル/円)との掛け合わせです。つまり取引の中には米ドルが介在しているため、時にはドルストレートでなくても米ドルの動向の影響を受けるのです。

「基軸通貨」とは

基軸通貨とは、国際通貨の中でも中心的な地位にある通貨を指します。2019年にBIS(国際決済銀行)が発表したデータによると、通貨別の取引高で米ドルが全体の約半分を占めているため、現在の基軸通貨は米ドルといえます。

こうした状況から、アメリカの経済指標は米ドルに限らず、為替相場全体に影響を及ぼす存在といえます。

トレードの際には、取引している通貨ペアに関連する国の経済指標に加え、アメリカの経済指標は常にチェックしておくと安定感が増すはずです。

経済指標の見方と発表結果に対する考え方

続いて、経済指標の基本的な見方についても理解を深めておきましょう。

経済指標の結果が好ましいものかどうかは、基本的に以下に挙げた方法で判断します。

  • 前月比や前年同月比と比べてどんな結果が出たか
  • 事前予想値に対してどんな結果が出たか

前月比や前年同月比・事前予想値などと比較する

経済指標を見る際に前月比や事前予想値と比較すべきなのは、その国の経済状況の動向を客観的に把握するためです。

例えば、経済状況を端的に表すわかりやすい例としてGDP(国内総生産)で考えてみましょう。

GDPはその国内で算出された付加価値、すなわち儲けの総額です。そのため、GDPの数値の変化を見ることで、その国の経済状況の良し悪しを端的に把握できます。

例えば、日本のGDPは1997年から2015年までの18年間で、12%しか拡大していません。年平均の成長率で考えると0.6%となっていて、長期停滞に入っていると考えられます。2023年の実質GDPが前期比で年率2.1%のマイナスとなったことからも、経済状況が芳しくないことが窺えるわけです。

経済状況が良くなければ、相場もいい反応は示しませんよね。

そうですね。ただ、経済状況が「良い」か「悪い」かは、過去のデータも踏まえて客観的に判断する必要があります。

ここで注意しなければならないのは、FX市場の反応がどうなるかは発表された数値だけでは決まらないということです。

仮にGDPが年率でマイナスとなっていても、経済状況が良くなっているのかどうかはほかのデータと比較しなければわかりません。さらに、もし前月比や前年同月比から下がっていたとしても、事前予想値と変わらなければ多くのトレーダーの予想通りとなって、FX市場の動きは鈍くなりがちです。

そのため、

  • 前月比や前年同月比と比べて良くなったか、悪くなったか
  • 事前予想値と同じ結果か、異なる結果か

これらを踏まえて考えることが、経済指標発表によって起こった値動きの意味まで理解して判断するには不可欠なのです。

各国で重要度が高い経済指標まとめ

それでは、具体的にどの経済指標をチェックしておくべきか見ていきます。

経済指標は各国に存在しますが、分類としては以下の4種類を押さえておくことが大切です。

  • 雇用
  • 物価
  • 景気
  • 金融政策

「雇用」であればアメリカの雇用統計、「物価」であればCPI(消費者物価指数)などが該当します。また、金融政策はFRB(連邦準備制度理事会)などで決定されますが、「引き締め」「緩和」「現状維持」のいずれの方針を採ったかによって相場の反応も異なります。

こうした経済指標ごとの分類と各経済指標の意味・影響力を理解することが、経済指標をトレードにうまく組み込んでいく上で役立つでしょう。

指標発表のスケジュールをまとめているサイトやアプリでは、各経済指標の重要度をランク付けしていることもあります。経済指標の日時をチェックする際に重要度まで把握しておくと、より経済指標発表への対策を立てやすくなります。

アメリカの重要な経済指標

アメリカの重要な経済指標は、以下の7つです。

  • 雇用統計
  • FRB(連邦準備制度理事会)
  • FOMC(連邦公開市場委員会)声明・議事録
  • CPI(消費者物価指数)
  • GDP(国内総生産)
  • ISM製造業景況指数
  • 新規失業保険申請件数

ひとつずつ詳しく解説していきます。

雇用統計

雇用統計は、アメリカ国内で失業している人と就業している人の割合を発表する経済指標です。

雇用統計のデータはFRB(連邦準備理事会)の参考指標のひとつであり、FRBは政策金利の引き上げや引き下げ検討のために雇用統計のデータを活用しています。そのため、雇用統計の結果次第で政策への期待感が変わり、為替レートは大きな影響を受けるのです。

アメリカの経済指標の中でも、最も注視しておくべき指標といえます。

FRB(連邦準備制度理事会)

FRB(連邦準備制度理事会)は、アメリカの中央銀行制度の最高意思決定機関です。

FRBでは公定歩合や支払準備率、公開市場操作などの金融政策を行っています。注意すべきは、FRBを構成する議長、副議長、理事の発言に対して為替市場が大きく反応することがある点です。FRB議長などのコメントが予定されている場合は、事前に時間帯を確認しておきましょう。

FRB:Federal Reserve Board

FOMC(連邦公開市場委員会)声明・議事録

FOMC(連邦公開市場委員会)声明・議事録は、FOMCが行われた3週間後に発表されます。

FOMCはアメリカの金融政策を決める会合で、アメリカの雇用の最大化や物価の安定、長期金利の見直しなどを目的としています。アメリカの持続的な成長のために金融政策についての話し合いが行われるほか、景気を調整するために金利の調整も行うため、重要な指標となっています。

FOMC:Federal Open Market Committee

一般的に、政策金利が引き上げられれば通貨の価値は下落し、引き上げられれば上昇します。

CPI(消費者物価指数)

CPI(消費者物価指数)は、全国民の世帯が購入するサービスや商品に係る値段に関して、合算した物価の変動を更新した際に発表する経済指標です。

アメリカやユーロ圏の国は中央銀行が政策運営の中に物価目標を設定していることから、CPIは判断材料となっています。そのためFXにおいては注目度の高いインフレ指標で、中でも季節性要因を受ける生鮮食品を除いた「コアCPI」は最も重視されています。

CPI:Consumer Price Index

GDP(国内総生産)

GDP(国内総生産)は、国内で一定期間内に生産された財やサービスなどの付加価値の合計を示す指標です。

GDPは「速報値」「改定値」「確報値」が発表されますが、トレードにおいては速報値の発表時に値動きが大きくなる傾向があります。そのため、トレードの際は速報値の前期比、前期比年率、前年同期比の値に着目しておきましょう。

GDP:Gross Domestic Product

ISM製造業景況指数

ISM製造業景況指数は、ISM(全米供給管理協会)が公表しているアメリカの製造業景況感を示します。

指数は300以上の製造業企業に対する「新規受注」「生産」「雇用」「入荷状況」「在庫」などのアンケートをもとに、回答結果から算出されます。数値が50を上回った場合は景気拡大、50を下回った場合は景気後退と判断されるため、発表時は50を分岐点として数値に注目しましょう。

ISM:Institute for Supply Management

新規失業保険申請件数

新規失業保険申請件数は、アメリカ国内の雇用情勢を示す経済指標です。

失業者が失業保険の給付を初めて申請した件数から集計され、景気動向に敏感に反応するといわれるため、雇用市場の健全性を測定する方法として景気先行指数にも用いられています。集計は毎週行われ、集計期間の翌木曜日に発表されます。

ユーロ圏の重要な経済指標

ユーロ圏の重要な経済指標は、以下の5つです。

  • ユーロ圏失業率
  • ECB(欧州中央銀行)政策理事会
  • HICP(消費者物価指数)
  • ユーロ圏小売売上高
  • GDP(ドイツ国内総生産)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

ユーロ圏失業率

ユーロ圏失業率は、ユーロ圏の雇用動向を示す経済指標です。

労働力人口に占める失業者の割合から算出され、失業率が上昇している場合は経済状況の悪化を示します。予想値よりも数値が高い場合は売り材料、低い場合は買い材料とされます。

ECB(欧州中央銀行)政策理事会

ECB(欧州中央銀行)政策理事会は、ユーロ圏の金融政策を決めるために開催される会合です。

毎月1回目の会合でその時のユーロ圏における経済情勢を評価し、金融政策の決定と発表を行います。ECBはアメリカでいうFRB(連邦準備制度理事会)にあたるため、世界的に注目度の高い経済指標となっています。

ECB:European Central Bank

HICP(消費者物価指数)

HICP(消費者物価指数)は、EU加盟国のマーストリヒト条約統一基準に基づいた物価指数です。

HICPはEU統計局によって公表され、ECB(欧州中央銀行)の金融政策に影響を与えるため、重要な経済指標となっています。

HICP:Harmonized Indices of Consumer Prices

ユーロ圏小売売上高

ユーロ圏小売売上高は、ユーロ圏の小売店の売り上げを毎月測定している経済指標です。

全体の小売売上高のうちドイツとフランスが5割弱を占め、個人消費や消費者信頼感とも相関性を示すため、消費者活動に関する重要な指標といえます。

消費者の支出が活発になれば、インフレ率が上昇して経済成長につながります。そのため、ユーロ圏小売売上高が予想を上回ればユーロ関連の通貨の買い材料になると考えられます。

GDP(ドイツ国内総生産)

GDP(ドイツ国内総生産)は、ドイツ国内における新規に生産・提供された財やサービスの合計金額です。

GDPはその国の経済活動の最も総合的な指標であり、付加価値に着目していることから、その国が1年間に出した儲けを把握できます。特に、ヨーロッパ最大の経済大国であるドイツのGDPはユーロ関連通貨にも影響を与える経済指標となっています。

GDP:Gross Domestic Product

日本の重要な経済指標

日本の重要な経済指標は以下の3つです。

  • 日銀金融政策決定会合
  • 日銀短観(全国企業短期経済観測調査)
  • CPI(消費者物価指数)

それぞれ詳しく見ていきます。

日銀金融政策決定会合

日銀金融政策決定会合では、日銀の政策委員によって金融政策の方向性が話し合われます。

金融市場調節の方針や基準割引率、貸付利率などについての審議・決定が行われるため、高い注目度を持つ経済指標です。日銀金融政策決定会合の内容が公表された際には、市場が敏感な反応を見せることもあるので、発表前後は相場の動向に注意しておきましょう。

日銀短観(全国企業短期経済観測調査)

日銀短観は、全国企業短期経済観測調査の通称です。

日本銀行がおよそ1万社におよぶ企業を調査し、景気の現状と先行きについての集計と分析を行います。特に景気が「良い」と答えた企業から「悪い」と答えた企業の割合を引いた業況判断指数・DIは企業の業況感や設備、雇用人員の過不足について指数化されるため、市場に対する強い影響力を持ちます。

DI:Diffusion Index

CPI(消費者物価指数)

CPI(消費者物価指数)は、消費者が購入する物やサービスの総合的な価格変動を表す経済指標です。

総合指数のほかに価格変動が大きい生鮮食品を除いた、コアCPIもあり、日本経済の分析や各種経済施策の指標となります。総務省によって毎月発表されるCPIは一般的に上昇だとインフレ、下降だとデフレの状態を意味します。

CPI:Consumer Price Index

経済指標についての注意点

ひととおり経済指標を見たところで、経済指標について注意すべきポイントも押さえておきましょう。

  • 経済指標発表の前後はトレードを控えるべき
  • 「織り込み済み」の場合は大きく動かないこともある
  • 経済指標狙いのトレードは禁止の場合もあるので注意

これらの注意点について、ひとつずつ詳しく解説していきます。

経済指標発表の前後はトレードを控えるべき

注意点の1つ目として、基本的に経済指標発表の前後はトレードを控えた方が無難です。

経済指標発表の結果が前月比や前年同月比、事前予想値とどのように違っているかでFX市場の反応が変わることはすでに説明した通りです。時には、それまで硬直気味だった相場にも大きな変動が見られるため、経済指標発表時の相場変動で利益を狙いたくなることもあるでしょう。

しかし、一般トレーダーには発表される経済指標が予想値と比べて高いか、低いかを先に知る術はなく、指標発表後に値動きがどちらへ転ぶかはわかりません

予測できない動きに備えるためにも、経済指標発表の結果による基本的な動きは理解しておくべきですが、あくまでもリスクを回避するための知識として考えておくことが大切です。経済指標の発表前後30分を目安にポジションを解消したり、トレードを控えるなどの対策を取るように心がけてください。

値動きに大きな影響を及ぼす情報を事前に手に入れられるのは、機関投資家など一部のトレーダーのみです。無理に経済指標狙いのトレードをするのではなく、トレードを避ける判断をすることも大切です。

「織り込み済み」の場合は大きく動かないこともある

2つ目の注意点は、FX市場は織り込み済み呼ばれるような経済指標発表の結果を前提とした動きを見せる場合があることです。

基本的に、経済指標狙いのトレードは安定感に欠くためおすすめしないことは先に触れた通りです。

しかし、FX市場にはファンダメンタルズ分析を主軸に、経済指標も活用した取引を行っているトレーダーも存在します。そういったトレーダーは、仮にアメリカの経済指標結果が良好で、FRB関係者からも利上げに前向きなコメントが多かったなら、FOMCでの利上げを予想しドル買いを進めるでしょう。

気をつけなければならないのは、こうした動きは経済指標発表前にすでに起こっているということです。

先ほどの例でいうなら、予想通りに利上げが実施されたとしても経済指標を注視しているトレーダーはすでにドルを買って持っている状態になります。そのため、経済指標の発表後にドル買いをするトレーダーは少なく、予想は的中したのに相場は動かない、といったことが起こるのです。

さらには、利確のドル売りによってむしろ価格は下落する、というケースも有り得ます。このように、経済指標に絡む値動きはイレギュラーな側面が多く把握が難しいことを知っておかなければいけません。

上の例は、経済指標の分析記事などで見る「材料出尽くし感」の表現にあたります。個人トレーダーはどうしても機関投資家などに比べて情報面ではやや出遅れるため、先手を取って動こうとしても後追いになってしまうことが多くなる点には十分に注意しましょう。

経済指標狙いのトレードは禁止しているFX業者が多いため注意

注意点の3つ目は、経済指標によって起こる大幅な値動きを狙ったトレードは、禁止しているFX業者が多いということです。

過去には、雇用統計の発表によってドル円(USD/JPY)が1時間のうちに170pips(1.7円)も上昇したこともありました。このような短時間で大きな利益を狙えるチャンスを逃したくないのが人間心理というものですが、特に海外FX業者は多くの場合、経済指標発表のみを狙った取引を禁止しています。

もちろん上で説明したように、経済指標発表の前後の値動きは分析しづらい面からもトレードは避けることを推奨します。ただそれ以上に、利用している海外FX業者が規約で経済指標狙いのトレードを禁止していた場合、規約違反をおかすと口座凍結となるおそれがあるのです。

海外FX業者が経済指標発表狙いのトレードを禁止している理由

海外FX業者が経済指標発表狙いのトレードを規約で禁じているのは、主にゼロカットシステムが関係しています。

ゼロカットシステムとは、口座残高以上の損失が出ても追証が発生せず、損失分をFX業者が負担してくれるシステムのことです。そのため、経済指標発表時のような激しい相場変動が予想される時にばかりトレードされると、含み損が大きく膨らんでFX業者の補填額が増え、経営を圧迫してしまうリスクがあります。

こうした事態を防ぐために、ゼロカットシステムを採用している海外FX業者はほとんどが経済指標発表のみを狙ったトレードを禁止しています。

経済指標発表狙いのトレードは、追証が発生する(口座残高以上の損失分もトレーダー自身が支払う)国内FX業者ならOKとしているところもあります。ただ、海外FX業者で規約違反になるのも、国内FX業者で追証が発生するのもどちらもリスクが高いため、選択肢としてはトレード回避をおすすめします。

経済指標発表の前後に激しい値動きが値動きが見られる理由

ここまでの説明で、「織り込み済みの場合もあるのに、なぜ経済指標発表の前後には値動きが激しくなることがあるのか」疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。

そのからくりは、下の2つの要素からなっています。

  • 1つの経済指標に対しても複数の解釈が生じる場合がある
  • 機関投資家による大口の売買や利確・損切りなどで予想の通じない動きになる

これらを詳しく見ていくことで、経済指標の値動きに対する理解を深めましょう。

1つの経済指標に対する複数の解釈が相場に迷いを生じさせる

経済指標の際に値動きが激しくなりやすい理由の1つ目は、経済指標の結果に対する解釈の違いです。

経済指標は主要なものほど事前に予想値が出ているため、経済指標を意識しているトレーダーはその予想値をもとにトレードプランを立てます。そうやって経済指標が値動きに織り込まれることで、チャートは経済指標の発表前から予想結果を反映したものになっているわけです。

しかし、実は経済指標は複数の要素が複合されて発表されているため、必ずしも発表された数値のみでは相場の動きは決まりません。

例えば、アメリカのPCE(個人消費支出価格指数)は家計が消費した財やサービスを集計したもので、食品とエネルギーを除いたコアPCEと同時に発表されます。

どちらも購買動向やインフレ測定のための重要な指標ですが、時には両者の結果が相反するものになる場合があります。PCEがドル高に向かいやすい内容なのにコアPCEが逆だと、市場参加者の解釈に迷いが生じ、一度価格が急騰した後に大きく下落する、といった動きを見せることがあるのです。

機関投資家の売買や利確・損切りが重なると予想できない動きになる

経済指標の際に値動きが激しくなりやすい理由の2つ目は、経済指標発表の前後に入る機関投資家や、個人トレーダーの注文が入り交じるためです。

機関投資家は企業のIR部署などと直接コンタクトできる立場や企業経営者とのつながり、各証券会社のアナリストの情報などを有しています。その上、膨大な情報を分析するスタッフも豊富にいるので、本来オープンにならない情報も含め、情報収集力・分析力は個人投資家とは比較になりません

そして、機関投資家は豊富な資金と高い情報力を武器に大口のポジションを持ちます。

もし機関投資家が指標発表直後、利益が出たポジションの利確注文を入れれば、価格は瞬間的に大きな下落を見せます。すると、経済指標の結果がプラスの材料であっても利確による下振れが起こり、利確分がさばけると反転上昇する、というイレギュラーな動きになるのです。

経済指標の結果がプラスだからと買い注文を入れたのに急落、というのはかなり怖いですね。

予想と全く異なる値動きになると、どうしても焦りや不安も出てきてしまいます。そういった意味でも、経済指標発表の前後にポジションを持つことはリスクが伴います。

さらに、経済指標時には機関投資家以外にも、大幅な価格変動を狙って両建てポジションを持っている個人トレーダーもいます。

両建てポジションなら、経済指標で上下どちらに価格が動いても利益を追うことができます。あらかじめ損切り注文を入れておけば、損失が出た方のポジションは早めに決済しておけるので、一定の利益が見込みやすいのです。

こうした損切り注文が大量に重なれば、個人トレーダーのポジションであっても値動きに影響が出ることも有り得ます。また、中には個人トレーダーの損切り注文を狙ってポジションを取っている大口トレーダーも存在するため、経済指標発表前後の値動きの予測はほとんど不可能といえます。

まとめ

経済指標発表時のFX市場には、大口トレーダーから個人投資家まで、様々なトレーダーの思惑が絡み合っています。

そのため、経済指標発表に伴う値動きの予測は不可能に近く、確度の高いトレードをすることは困難です。運良く稼げることがあったとしても高いリスクが伴い、海外FX業者を利用する場合は経済指標発表のタイミングばかり狙っているとアカウントが凍結される恐れもあります。

こうしたことを踏まえると、経済指標については最低限の知識を身につけた上で、普段のトレードに支障をきたさないよう立ち回ることが最適解といえるでしょう。

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