FX初心者の方からは、「チャートパターンを覚えたのにトレードで勝てない!」という相談をよく受けます。
参考書やインターネットなどでは、チャートパターンを学ぶことを推奨していることが多いですが、実はチャートパターンを丸暗記するだけでは勝率は上がりません。なぜかというと、チャートパターンを活かすためのテクニカル分析に大切な観点が抜けているためです。
覚えたチャートパターンを活用しながら勝てるトレーダーになるには、相場が置かれている環境を認識する力を鍛え、適切なタイミングでエントリーすることが必要です。
そこで今回は、頻出するチャートパターンの紹介と環境認識力の鍛え方、エントリーポイントの見極め方を解説していきます。
チャートパターンはトレンドの転換点になることも多く、うまくはまれば大きな利益も狙えます。どうすればチャートパターンを使って勝てるようになるのか、学んでいってください。
- FX初心者が覚えるべきチャートパターンは少数で良い
- チャートパターンを覚えても勝てないようならMTF分析をしてみる
- チャートパターンはほかの要素と組み合わせることで強力な武器になる
FXのチャートパターンとは
チャートパターンとは、チャート上に表示された値動きが特徴的な「型」になるものの総称です。
チャート上に表示されている高値や安値を線で結ぶと、特徴的な図形になることがあります。この図形をパターン化することで、チャート上で形成された時に今後の相場が上下のどちらに向かうのかを予測できるようにしたものがチャートパターンです。
トレンドの発生や継続、反転を予測するためのテクニカル分析手法として、初心者だけではなく幅広いレベルのトレーダーが利用しています。
FX初心者が覚えるべきチャートパターン5選
チャートパターンを活用して勝てるようになるには、まずFX初心者でも扱いやすい、厳選したチャートパターンを覚えましょう。
チャートパターンは数多く存在しますが、中には出現率が低く実践的ではないパターンもあるため、FXを始めたばかりの初心者が全てのパターンを覚える必要はありません。頻出チャートパターンの中でもトレードに活用しやすい、以下の5種類を押さえておくだけでも大きな助けになります。
頻出するチャートパターンをしっかりと覚え、環境認識力と合わせて実践での経験を積んでいくことがテクニカル分析を上達させる近道です。
ダブルトップ・ダブルボトム
ダブルトップ・ダブルボトムは、トレンド転換を示唆するチャートパターンです。
相場が上昇を続けて2つの山を作った後に下落するパターンがダブルトップ、逆に相場が下落を続けて2つの谷を作った後に上昇するパターンがダブルボトムとなります。ダブルトップから、チャートパターンが表す意味を詳しく見ていきましょう。
上図はダブルトップで、上値の抵抗線(黒の点線)が①と③でレジスタンスラインになっています。②は下値支持線(赤い点線)でサポートラインですが、②のサポートラインを超えて相場が下落した際にはダブルトップの完成です。
サポートラインはネックラインへ変換され、ネックラインが以降の相場ではレジスタンスラインとして機能します。
ダブルトップ形成中に下支えとなっていたサポートラインが、完成後は天井になるんですね。
ダブルトップは完全に形成されたことを確認してから、ネックラインでの戻り売りを狙うと反発が期待できるでしょう。
反対に、ダブルボトムでは下値支持線(黒の点線)が①と③でサポートラインになっていて、上値抵抗線(赤い点線)が②でレジスタンスラインとなります。②のレジスタンスラインを超えて相場が上昇した際にはダブルボトムの完成です。
レジスタンスラインがネックラインへ変換され、ネックラインは以降の相場のサポートラインとして機能します。
トリプルトップ・トリプルボトム・ヘッドアンドショルダー
ダブルトップやダブルボトムと似た形として、トリプルトップ・トリプルボトムがあります。
ダブルトップよりも山が1つ多い型がトリプルトップ、ダブルボトムよりも谷が1つ多い型がトリプルボトムです。同じ高さで相場が3回押し返されている形であり、ダブルトップやダブルボトムよりも強い指標になります。
上昇トレンド中のトリプルトップは下落トレンドへの転換、下落トレンド中のトリプルボトムは上昇トレンドへの転換を示すシグナルです。トリプルトップ・トリプルボトムでもネックラインが売買のポイントとなるため、トレードの際は意識して確認しておきましょう。
また、トリプルトップ・トリプルボトムにはヘッドアンドショルダーという型も存在します。
トリプルトップの中でも真ん中の山が高くなっているものがヘッドアンドショルダートップ(三尊天井)、トリプルボトムの中でも真ん中の谷が低くなっているものがヘッドアンドショルダーボトム(逆三尊)です。
天井または底値で出現すれば、トリプルトップやトリプルボトムよりも強い相場転換のシグナルとなります。
三角持ち合い(トライアングル)
「三角持ち合い(トライアングル)」と呼ばれるチャートパターンも、頻出するため覚えておきましょう。
上昇と下落の値動きが時間の経過とともに収束した場合、高値をつないだレジスタンスラインと安値をつないだサポートラインがチャート上で三角形を形成します。この状態を「三角持ち合い」や「ペナントフラッグ」と呼び、その中でも以下の3種類はよく出現する型です。
シンメトリカルトライアングルは、互いのラインに傾斜がある三角形です。
相場が収束した後にレジスタンスラインかサポートラインをブレイクした時には、市場が相場の均衡が崩れたと判断して大きな力が働くため、上方向にラインブレイクすれば上昇トレンド、下方向にラインブレイクすれば下落トレンドが始まるシグナルです。
また、三角持ち合いの中でもレジスタンスラインが平行な型をアセンディングトライアルグル、サポートラインが平行な型をディセンディングトライアルグルと呼びます。
アセンディングトライアングルとディセンディングトライアングルは、どちらもトレンドの継続を示すシグナルです。買いと売りのどちらの勢いが強いかを見たい時には、こうした三角持ち合いの型に着目することでより強い根拠となるでしょう。
上昇フラッグ・下降フラッグ
相場が勢い良くどちらかの方向に動いた後の反転では、「フラッグ」が見られることがあります。
相場の強い上昇の後、反転によって下向きのトレンドラインが形成される型が上昇フラッグです。
フラッグ内では、持ち合いをしながら徐々に相場が下落トレンドに移ります。しかしこの動きは相場の一時的な調整期間であり、上方のトレンドライン(レジスタンスライン)をブレイクすると相場が再び強く上昇する特徴があります。
反対に、相場の強い下落の後、反転によって上向きのトレンドラインが形状される型が下降フラッグです。
上昇フラッグとは逆に、下方のトレンドライン(サポートライン)をブレイクすると相場が再び強く下落する特徴があります。
トレンド中に調整局面になると、勢いが弱まりこのまま反転するのでは、と不安に駆られることもあるでしょう。そんな時、フラッグの可能性を考えておくだけでも冷静な判断に役立つので、ブレイク狙いのトレードに限らず知っておいて損はありません。
ソーサートップ・ソーサーボトム
相場の高値圏や安値圏で出現する、皿型のチャートパターンがソーサートップ・ソーサーボトムです。
ソーサ―トップは相場が高値圏になると出現する形状で、上向きに盛り上がった皿の型となります。
緩やかな上昇トレンドが徐々に勢いをなくした時に出現するため、直近の安値を下回った時には相場が急落する下降トレンドへの転換シグナルです。ダブルトップと同様に、ブレイクされたサポートラインはネックラインへと変換され、その後のレジスタンスラインとして意識されます。
反対に、ソーサ―ボトムは相場が底値圏になると出現する形状で、下向きに盛り下がった皿の型となります。
緩やかな下落トレンドが徐々に勢いをなくした時に出現するため、直近の高値を上回った時には相場が急騰する上昇トレンドへの転換シグナルです。ダブルボトムと同様、ブレイクされたレジスタンスラインはネックラインへと変換され、その後のサポートラインとして意識されます。
FXでチャートパターンを覚えても勝てない原因
主要なチャートパターンを紹介しましたが、チャートパターンを覚えるだけでは偶然利益を出すことはできても、トレードに勝ち続けることは不可能です。
その主な原因としては、以下の3つが挙げられます。
こうした失敗は、FX初心者には非常によく見られます。チャートパターンを勉強してテクニカル分析に取り入れているのに勝率が上がらない、と悩んでいるようなら、当てはまるものがないか確認してみてください。
上位足の確認をせずにチャートパターンだけで判断している
チャートパターンを覚えたのに勝てない原因の1つ目は、確認しているのがチャートパターンの型だけになってしまっているケースです。
チャートは上位足になるほど相場の方向性が強く、上位足の方向性に逆らったエントリーをすれば逆張りをすることになります。仮に上位足で上昇トレンドが出ている時に、下位足で下落のシグナルとなるチャートパターンが出たからと売りでエントリーすれば、損切りにあう確率が高くなるでしょう。
チャートパターンの型を確認したら、エントリーを決めるまでの間に上位足の環境がどうなっているかは必ず把握する必要があります。
いずれの時間足を基準にする場合でも、エントリー前には必ず上位足の方向性を確認し、現在の相場環境を認識しておくことが大切です。
チャートパターンが完成する前にトレードしている
チャートパターンを覚えたのに勝てない原因の2つ目は、チャートパターンの型が完成する前に「もうすぐこの型が完成するだろう」と見切り段階でエントリーしていることです。
チャートパターンは完成して初めてトレンドの転換や継続を示すため、完成の前にエントリーをしても、何の法則性も持たない無根拠なエントリーとなってしまいます。きちんとテクニカル分析をしてトレードしているつもりでも、実際には当てはまっていない、というケースがあるのです。
「もうすぐダブルトップの型が完成して下降トレンドに入りそうだ」と思っても、きちんとネックラインを下抜けたことを確認してからエントリーすべきなんですね。
その通りです。ダブルトップが完成しそうでも、実はトリプルボトムを形成する途中で、再び価格が上昇する可能性も大いにありますからね。
せっかく覚えたチャートパターンで逆に損失を増やさないためにも、見切り段階でのエントリーは控え、必ず型の完成を確認してからエントリーする心構えを持ちましょう。
マニアックなチャートパターンでばかり勝負している
チャートパターンを覚えたのに勝てない原因の3つ目は、メジャーなチャートパターンではなく、マニアックなものばかりで勝負しようとしている場合です。
チャートパターンは数十種類もあり、出現する割合は様々です。ただ、まれにしか発生しないマニアックなチャートパターンだから勝ちやすい、ということはありません。むしろ、ダブルトップのように目にすることの多いチャートパターンの方が多くの人に意識されるため、動きの読みやすさは勝ります。
経験が浅いうちは、まず頻出するチャートパターンをしっかりと覚え、チャート上で型が完成しているかを念入りに確認することを心がけましょう。
マニアックなチャートパターンほど、型の完成の見極めが難しいという難点もあります。FX初心者がそういったチャートパターンでばかりトレードしていたら、根拠の乏しいエントリーばかりになってしまうので注意してください。
FXでチャートパターンを使って勝てるようになる方法
チャートパターンを駆使して勝てるトレーダーになるためには、環境認識などのチャート分析の手段も身につけることと、トレードで常に実力を発揮するためのマインドが必要です。
チャートパターンはあくまでもテクニカル分析のひとつの手法であり、単体で扱ってもなかなか勝率は上がりません。チャートパターンを使いこなしてトレードで利益を上げるには、丸暗記して終わりではなく、ほかのテクニカル分析と組み合わせるなどの工夫が必要です。
環境認識やほかのテクニカル手法と併用することで、チャートパターンはより精度の高い相場分析の根拠へと昇華させることができます。
またテクニカル面以外でも、トレードを繰り返して勝利を重ねるためにはトレードに対してどんな心構えを持つかが大切になります。トレードへの心構えはFXにおいてマインドと表現されることが多く、スポーツ同様、FXでも精神面のコントロールが成績に大きく影響するのです。
MTF(マルチタイムフレーム)分析で環境認識をする
チャートパターンを活用するには相場全体の状況を把握する力が求められますが、環境認識の中でも代表的なものが「MTF(マルチタイムフレーム)分析」です。
MTF分析とは、複数の時間軸でチャートの方向性を分析することで、日足→時間足→分足のように長い時間軸から順番に方向性を把握するのが基本です。
複数の時間軸でチャートを分析し、トレンドの方向が一致している時にエントリーすれば高い勝率が見込めるでしょう。さらに、MTF分析はトレードの根拠が増えるだけでなく、トレンド逆行など不利なポジションを持ってしまうリスクが大幅に減り、損失を出す可能性も低くなります。
FX初心者がトレードスキルを磨くにあたって、上位足の環境を認識するMTF分析は必須の能力といえます。
MTF分析をしているかどうかが、トレーダーとしての分水嶺といっても過言ではありません。
出現頻度の高いチャートパターンで勝負する
チャートパターンを使っても勝てない状況を脱出するには、まずは出現頻度の高いチャートパターンで勝てるように勝負をするように心がけましょう。
チャートパターンの出現は単独でエントリーの根拠とするには乏しく、それゆえに出現頻度の高さが勝率に直接結びつくものではありません。しかし、頻出パターンならシンプルにトレード機会が多いため詳細に分析する機会が多くなり、傾向や対策を組み立てやすくなります。
滅多に出ないチャートパターンだと、トレード機会自体も少なくて練習がしづらいですね。
また、出現頻度の高いチャートパターンは、見方を変えれば多くのトレーダーが待ち構えている型といえます。
なぜなら、よく相場に現れるメジャーなチャートパターンほど覚えられやすく、意識されやすいため「トリプルトップが形成されたら、ネックラインから売りを入れよう」といったトレードプランを立てて出現を待っているトレーダーも増えるわけです。
こうした市場参加者の心理を読んで自身のトレードに活かせることも、出現頻度の高いチャートパターンでトレードするメリットなのです。
なのでまずはダブルトップやダブルボトム、シンメトリカルトライアングルなどの頻出するチャートパターンが出ていないかを確認し、MTF分析やほかのテクニカル指標と合わせて、強い根拠を持ってトレードすることを目指しましょう。
トレードの大半は「待つ」時間だと理解する
チャートパターンを覚えて、テクニカル分析も学んだのに勝てない、という場合は「待つ」マインドを身につけましょう。
相場の動きが気になって仕方がなくなり、四六時中チャートとのにらめっこを続けるのはFX初心者にありがちな行動です。その上、チャートを眺めているとどうしてもポジションを持たないといけない気になり、強引なトレードをしてしまうことも珍しくありません。
しかし、勝率を上げていくためには、じっくりと確実なチャンスを待ってエントリーをすることが非常に重要です。投資の格言にもあるとおり、「休むも相場」なのです。
チャートパターンの完成前や、テクニカル指標のシグナル点灯前に思い込みでトレードをしてしまうのは、FX初心者にありがちな失敗です。思わぬ負けで損失が出てしまったら、「待つ」ことができていたかどうか、自分でよく振り返ってみましょう。
さらに、エントリーをした後にもチャートを見つめていると、「利益が出た時には少額で利確し、損失が出れば戻ることを期待」してしまうのが人間の心理です。利小損大のトレードを繰り返せば、当然に証拠金を減少させることになります。
安定した利益を積み重ねるためにはトレード=待つものであることを理解し、根拠に従ってエントリーポイントを厳選しながらトレードを行いましょう。
どうしても気が急いて、エントリーを待てずに成行注文を繰り返して損失が出てしまうんですが、何か対策できることはないでしょうか。
もちろん「待つ」ことができるように訓練することが一番ですが、決済でも焦りが出てしまうことを防ぐために、指値注文や逆指値注文を活用し、チャートから目を離す放置トレードに慣れるなどの工夫も有効です。
まとめ:チャートパターンを丸暗記するだけでは武器にはならない
チャートパターンは、相場を判断する方法として多くのトレーダーに愛用されています。
しかし、チャートパターン単体ではチャートの見た目だけでトレードすることと変わりません。根拠がないままのトレードでは安定した利益を出すことは期待できないため、チャートパターンをトレードで活用する際には、以下の3つのポイントを意識しましょう。
利益を重ねるためには、単にチャートパターンを丸暗記するのではなく、それぞれのチャートパターンが持つ意味を十分に理解し、上位足での相場環境を認識したうえで適切なエントリーを行うことが求められます。まずは相場によく現れるパターンから実践してみてください。
ローソク足よりも大きな動きで相場の未来を示唆するチャートパターンへの理解を深めることは、相場全体の動きへの理解を深めることにもつながります。ほかの分析方法も併用しつつ精度を上げていくことで、トレードの頼りになる相棒になるでしょう。
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