ダウ理論とは?ダウ理論の実践的・具体的なFXトレード手法を紹介!

FXの基礎知識

「ダウ理論」は、あらゆる著書でも紹介されているテクニカル分析の基礎中の基礎です。

しかし、ダウ理論という言葉自体はよく耳にするものの、あまり詳しく内容を理解しないままトレードをしているトレーダーも意外と多いのではないでしょうか。ダウ理論を基礎からしっかり理解しておけば、将来的にも長く頼れる武器となるため、絶対に身につけておくべき知識といえます。

そこで今回は、ダウ理論の6つの基本法則の詳細と、有効に活用するための実践的なトレード手法を併せて紹介していきます。

この記事でわかること
  • ダウ理論は値動きの本質に着目した、トレーダーに100年以上使われている理論
  • ダウ理論の基本法則6でトレンドの継続・転換が確認できる
  • ほかのテクニカル分析と組み合わせることでチャートの分析力がさらに向上する

ダウ理論とは「トレンド相場を分析するための理論」

ダウ理論は、特にトレンド相場の分析に力を発揮する理論です。

6種類の基本法則の根本にあるのは「値動きの本質は売り手が多ければ下がり、買い手が多ければ上がるもの」という、極めてシンプルな考え方です。株や仮想通貨などの様々な投資分野でも同じように通用するため、FXトレーダーに限らず世界中で100年以上もの間、親しまれてきました。

まずはダウ理論の全容を把握するためにも、法則1から6まで、ポイントを確認していきます。

ただし、元々は米国株式市場を念頭に考えられた理論なので、FXに置き換えると合致しない部分も存在します。合致しない法則は無理に当てはめる必要はないため、FXに適している法則1と法則6について特に重点的に理解しましょう。

法則1:価格は全ての事象を織り込む

ダウ理論の第1の法則「価格は全ての事象を織り込む」は、テクニカル分析の根底を支える考え方です。

そもそも、相場は需要と供給によって形成されています。このバランスが変動することで値動きが生じているわけですが、値動きの中には世の中で起こる全ての情報が反映され、チャートとして可視化されている、と考えるのが第1の法則なのです。

「世の中で起こる全ての情報」には経済指標や金融政策、自然災害の発生などのファンタメンタルズ要因も含まれます。しかも、チャートにはこれまでの値動きや現在の相場だけでなく、「これから相場が上がるのか、下がるのか」という将来の兆候も織り込まれていると考えられます。

つまり第1の法則から、「今後の相場を予測するためには値動き=チャートを分析すること(テクニカル分析)が重要である」といえるのです。

経済指標でよく言われる「織り込み済み」の動きも、ダウ理論で考えればごく当然といえます。

法則2:トレンドには3種類ある

ダウ理論の第2の法則は「トレンドは短期・中期・長期の3種類に分類される」というものです。

一般的に、FXでは1ヶ月未満のトレンドは短期(小トレンド)、数週間~数ヶ月のトレンドは中期(二次トレンド)、1年以上のトレンドは長期(主要トレンド)と分類されます。

  • 短期(小トレンド):1ヶ月未満のトレンド
  • 中期(二次トレンド):数週間~数ヶ月のトレンド
  • 長期(主要トレンド):1年以上のトレンド

そしてこれら3種類のトレンドは相互に関係し合う、とされていて、実際に相場は時間軸ごとに異なるトレンドを形成します。考え方としては、MTF(マルチタイムフレーム)分析に近いものです。複数の時間軸から相場を分析し、現在のトレンド把握などの環境認識を行うのだ理解しておきましょう。

法則3:長期トレンドは3段階からなる

ダウ理論の第3の法則は「長期トレンドは3段階からなる」です。

ダウ理論ではトレンドを段階ごとに分解して考えており、時系列で先行期、追随期、利食い期の3つに並べられます。

  1. 先行期(第一段階)
  2. 追随期(第二段階)
  3. 利食い期(第三段階)

先行期(第一段階)は、底値や天井を狙って一部のトレーダーが買い(売り)始める時期です。トレンドの力はそれほど強くないため、ほとんどのトレーダーは反応しないまま、徐々に相場が動き始めてトレンドを形成していく段階にあたります。

次に訪れるのは追随期(第二段階)です。先行期での値動きの上昇や下落、また形成されたトレンドを見て、多くのトレーダーが市場に参入してきます。売買が活発に繰り返された結果、相場が大きく動き始め明確なトレンドが発生します。

最後に迎えるのが利食い期(第三段階)です。主に先行期にポジションを保有していたトレーダーが利益確定に移ることで、トレンドが終了へと向かう時期になります。

基本的に、個人トレーダーが狙うべきはこの中の追随期です。

先行期でトレンドの初動に乗るためには、トレードの根拠が乏しいことからある程度のリスクが伴います。また、利食い期でトレンドに乗ろうとすると、高値(安値)を掴んで大きな損失を抱える可能性が高いため、テクニカル分析がききやすい追随期で相場の波に乗ることを目指しましょう

「頭と尻尾はくれてやれ」の格言にもあるように、先行期や利食い期で無理に利益を追う必要はありません。追随期だけを狙っていても利益は十分出せるものなので、追随期になるまで「待つ」ことが何よりも大切です。

法則4:平均は相互に確認される

ダウ理論の第4の法則は「平均は相互に確認される」です。

「平均は相互に確認される」とは、言い方を変えれば「相関関係にある通貨を相互に確認する」ということです。FXでは通貨ペアが株式での銘柄に相当するため、取引している通貨ペアと相関性のある他の通貨ペアを観察することで、分析の正確性が高まることを意味します。

例えばドル円(USD/JPY)のみを観察してトレードしている場合、ドル高になったとしても要因の判別は困難です。

ドル高の原因にはドルの上昇や円の下落、別の通貨の変動による影響など、様々なものが考えられます。しかしユーロやドルストレート、クロス円の通貨ペアもチェックしていれば、「今、米ドルと円は世界的に見て強いのか、弱いのか」を別の視点から確認してドル高の理由を把握できるのです。

相関関係にある通貨ペアの動向把握はより精度の高い分析を可能にし、トレードの根拠を増やすことにもつながります。トレード成績を安定させるためにも、関係通貨の動きは普段からこまめにチェックしておくことが大切です。

確かに、ユーロやポンドのように相関関係が強い通貨を見ていても、動きが影響し合っているように感じますね。

自分が普段からトレードしている通貨ペアをもとに、相関関係のある通貨ペアを監視しておくと様々な発見がありますよ。

法則5:トレンドは出来高でも確認される

ダウ理論の第5の法則は「トレンドは出来高でも確認される」です。

出来高とは、一定期間内に成立した売買の数量を指します。多数のトレーダーが市場に参加すると取引量=出来高が増え、トレンドの転換や加速につながるため、株式において出来高はテクニカル分析の重要な要素のひとつとなっています。

しかしFXの場合、株式市場のように証券取引所があるわけではないため、市場全体での出来高を知る術がありません

FX会社によっては、自社での取引量や注文量を公開していることもあります。ただ、公開されているデータはあくまでも市場全体のごく一部に過ぎないため、分析に活用するとしても出来高のみで考えるのではなく、必ず複数のテクニカル指標を組み合わせるべきといえます。

法則6:トレンドは明確な転換シグナルが発生しない限り継続する

ダウ理論の第6の法則は「トレンドは明確な転換シグナルが発生しない限り継続する」です。

第6の法則は、6つの基本法則の中でも最も実践での活用機会が多い理論です。トレンドが継続しているか、転換したかをダウ理論に基づいて正確に判断できるかどうかがトレードの成否をわけるといっても過言ではありません。

ダウ理論においては、トレンド方向への高値・安値更新があり、かつ逆方向への更新がない場合はトレンド継続と捉えます。反対に、トレンド方向への高値・安値更新が行われず、逆方向に価格が更新した場合はトレンドが転換したと考えます。

ダウ理論における「トレンド継続」の定義
  • 上昇トレンド:「安値」を更新せずに「高値」を更新
  • 下降トレンド:「高値」を更新せずに「安値」を更新
ダウ理論における「トレンド転換」の定義
  • 上昇トレンド:「高値」を更新せずに「安値」を更新
  • 下降トレンド:「安値」を更新せずに「高値」を更新

例えば、下の図であれば上昇トレンドが形成された後、下降トレンドへと転換した状態です。

ダウ理論でトレンド継続とトレンド転換を考える時、鍵となるのは高値・安値です。上図でいうなら、上昇トレンドの形成が確認できた段階で次の3点に注目しておくと、トレンドの状況を見極めやすくなります。チャートを見る際、常にトレンドの確認を意識する癖をつけておきましょう。

  • 「高値」と「安値」は更新しているか
  • 「高値」が更新しなかった時に、「安値」の更新はあったか
  • 「安値」が更新した時に、「高値」の更新はあったか

トレンド転換のシグナルが発生しない限り、トレンドは継続し続けます。トレンドに乗ったポジションを持つことはFXの基本中の基本なので、FX初心者こそダウ理論をもとにセオリーに則ったトレードを心がけましょう。

ダウ理論はテクニカル分析と組み合わせて真価を発揮する

ここまでダウ理論の法則を順に紹介してきましたが、ダウ理論は他のテクニカル分析と組み合わせることで更に精度の高い分析が可能となります。

世の中には、ダウ理論のみを活用して資産を増やし続けるプロのトレーダーも一部存在しています。しかしそれは長い年月をかけて培った経験が為せる技なので、一朝一夕で身につけることは不可能です。現在経験を積んでいる段階であれば、無理をしてダウ理論のみに絞る必要はありません。

ダウ理論もあくまで「トレードの根拠の一部」であると捉え、他のツールを併用して根拠を増やすことが勝率の高いトレードへとつながるでしょう。ここからは、ダウ理論をベースに実際のトレードで分析・エントリー・決済をどのように行うのか、具体的な例を挙げながら解説していきます。

ダウ理論とMTF(マルチタイムフレーム)分析でトレンドを把握する

まず最初に紹介するのは、相場のトレンドを把握するためにダウ理論とMTF分析を併用する方法です。

MTF分析では日足→時間足→分足のように、複数の時間軸を順に見ていくことでチャートの方向性を把握します。例として、ドル円(USD/JPY)のデイトレードでMTF分析を用いて日足、時間足、分足それぞれのトレンドがどうなっているかを確認してみましょう。

上図では分足はダウ理論により上昇トレンドへの転換が確認できますが、時間足、日足ではいずれも高値を更新しておらず、下降トレンド継続の状況です。つまり、相場全体として短期的には上昇トレンドの兆しが見えるが、中長期的には下降トレンド中であるといえます。

こうした状況は、下降トレンド中の調整局面として一時的に価格が戻っていると考えられます。そのため、下降トレンドに沿って戻り売りでポジションを持つことが有効な場面です。

MTF分析をしようと思ってもトレンド把握が難しく感じることがありますが、ダウ理論を併用すれば判断がしやすくなりますね。

ダウ理論の理解を深めるだけでも、トレードの幅は大きく広がっていきますよ。

水平線(レジスタンス・サポートライン)からエントリーポイントを探る

ダウ理論でトレンドを確認した後は、上昇トレンド中なら買い、下降トレンド中なら売りのエントリーポイントを探しましょう。

ダウ理論は高値と安値でトレンドを定義しているので、チャート上の高値や安値を結んで水平線を引くエントリーポイントを探る手法は、ダウ理論と非常に相性の良い組み合わせといえます。ダウ理論と水平線なら、難しい手法を使わず思いのほか簡単にエントリーポイントを見つけることも可能です。

下の図はドル円(USD/JPY)の日足チャートで、ダウ理論におけるトレンド転換が起こった後、上昇トレンドが発生しています。注目すべきは、トレンドの転換点となった前回の高値が、その後のチャート上でサポートラインとして機能していることです。

ダウ理論も水平線も、覚えてしまえばFX初心者にもわかりやすく扱いやすい分析方法なので、基本として押さえておくと様々な場面で活躍します。何年もFXをやっているのに結果が出なくなってきた、と行き詰まっているトレーダーにも、初心にかえる意味でおすすめの手法といえます。

ダウ理論と移動平均線(MA)からトレンドの継続を確認する

ポジションを保有中にトレンドの継続を確認する際には、移動平均線(MA)を活用しましょう。

移動平均線は一定期間の終値の平均値を線で結んだもので、世界中で最も使われているテクニカル指標のひとつです。移動平均線の見方もダウ理論と同様に非常にシンプルで、

  • 「ローソク足が右肩上がり」かつ「移動平均線の上にある」間は上昇トレンド
  • 「ローソク足が右肩下がり」かつ「移動平均線の下にある」間は下降トレンド

と判断できます。ほかにも移動平均線からは様々な情報を読み取ることが可能なので、下にまとめたような内容を知識として持っておくだけでもトレードの幅が広がります。

  • 強い上昇トレンド:短期・中期・長期全ての移動平均線が右肩上がりになっている
  • 強い下降トレンド:短期・中期・長期全ての移動平均線が右肩下がりになっている
  • ゴールデンクロス:下降トレンドから上昇トレンドへの転換
  • デッドクロス:上昇トレンドから下降トレンドへの転換

ゴールデンクロスとは、短期線が中長期線を下から上へ突き抜けることを指します。デッドクロスは反対に、短期線が中長期線を上から下に突き抜けることをいいます。

下の図のように、移動平均線で明確なトレンドが確認できる相場は大きなチャンスが到来している状況です。

ただし、移動平均線は相場状況を反映するまでにやや時間がかかることが弱点です。

トレンド転換が起こっても反映が遅いため、移動平均線だけを頼りにしているとエントリーや決済が遅れてしまうことも少なくありません。しかし、ダウ理論を併用すれば移動平均線の反応の遅さ、ダウ理論の直感的な判断のしにくさ、という両者の弱点を補い合った運用ができるようになります。

フィボナッチ・エクスパンションで利確ポイントを決める

保有したポジションをどこで決済するか迷う場合は、フィボナッチ・エクスパンションとダウ理論を組み合わせて分析してみましょう。

フィボナッチ・エクスパンションでは、「一旦上昇(下降)した相場が一時的に戻り(押し)、その後さらに上昇(下降)する」というN字型波動の思考によって、値動きがどこまで上昇(下降)するのかを予測します。そのため、利益確定をどの水準に置くか出口戦略を練る際に有用です。

下の図でいうと、チャート上の起点Aの安値から起点Bの高値に到達し、その後起点Cまで一時的に戻り売りが発生した時にN字型の波動(白線)が形成されています。

フィボナッチ・エクスパンションは「上昇(下降)⇒戻り(押し)⇒再上昇(再下降)」を1セットと考えるので、起点A~Cを基準として、フィボナッチ数列にもとづいてライン(61.8%、100.0%、161.8%)が表示されます。

フィボナッチ・エクスパンションの61.8%、100.0%、161.8%は利確ラインとして意識されやすいため、ポジション保有の際の参考にしましょう。また、これらのラインは反発しやすいという特徴のほか、一度超えればレジサポラインとしても機能するため、エントリーポイントとしても活用可能です。

まとめ:ダウ理論はテクニカル分析と組み合わせて使おう

今回はダウ理論における6つの法則と、テクニカル分析と組み合わせた実践的なトレードについて解説しました。

現代には沢山のテクニカル手法がありふれていて、どの手法を利用するのかはトレーダー次第です。ただ、そもそもテクニカル手法は難解複雑なものほど効果的になるわけではありません。実際に、知識の浅かった初心者の方が経験を積んでからよりも稼げていた、という声はよく聞かれます。

インターネットやSNSで紹介される手法に触れていくうち、チャートの分析を必要以上に複雑に考え過ぎるようになると、相場の原則からかえって遠ざかってしまうことは珍しくないのです。

ダウ理論は100年以上もの昔から続く、非常にシンプルな相場理論です。FX初心者の地固めに最適であることはもちろん、トレードに行き詰まった時こそ初心に帰り、シンプルな理論と手法でもう一度基礎から学びなおすことが成長につながるでしょう。

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