株式などとFXの比較では、よく「FXは24時間取引できる」ことがメリットといわれます。
実際、FXの相場自体は土日も動き続けているのですが、土日にトレードできるFX業者はほぼありません。土日に取引できないからこそ、週末をトレードの勉強や過去の取引の分析にあてることもできるものの、なぜチャートが動いているのに取引できないのかについては疑問が残ってしまうでしょう。
そこでこの記事では、土日にトレードができない理由や、週末にかけてトレードで注意すべきポイント、土日にトレーダーが取り組むべきことについて解説します。
- 土日もチャートは動いているがトレードはできない
- 週末のトレードやポジション持ち越しは十分注意が必要
- トレードできないからこそ土日にトレードの反省や次週の備えをすべき
FXは土日でも相場は動いているがトレードはできない
まず土日にチャートが動かず、トレードもできないのは、土日が日本や欧米など主要な国々の休日にあたるためです。
東京市場やロンドン市場、ニューヨーク市場が開場していないことからレートの配信もなく、土日のトレードができないわけです。これは日本だけでなく、ヨーロッパ、アメリカなどでも同様で、土日は多くのトレーダーにとっての休日といえます。
ではなぜ土日にチャートが動いていないにも関わらず、月曜日に窓開けが起こるかというと、中東市場が関係しています。実は、中東などイスラム教国家では土日が平日扱いになっているので、バーレーン市場は土日でも開場しているのです。
中東市場はニューヨーク市場などに比べると非常に規模が小さく、取引量も流動性も低いので、他市場ほどの影響力は持ちません。しかし相場自体は動いていることから、中東市場の動向によってはチャートが週明けに窓開けをすることがあります。
トレードできるのは月曜日の朝から土曜日の朝まで
さらに具体的に、FXでトレードできる時間を見ていきます。
FXの一般的な取引時間は、月曜日の午前7時前後から土曜日の午前7時前後までです。分単位の細かな時間はFX業者ごとに異なる場合もあるため、トレードを始める前には必ず利用しているFX業者の取引時間を確認しておくことが大切です。
また、FXではサマータイム(夏時間)に取引時間が変更になり、土曜の閉場時間も1時間ほどずれるので注意しましょう。
サマータイム(夏時間)は取引時間が短縮される
サマータイム(夏時間)は日本ではあまり馴染みのない制度ですが、欧米を中心に採用されています。
サマータイムとは、日の出の時刻が早まる3月から11月にかけて時計の針を1時間進め、太陽の出ている時間を有効に使うことを目的とした制度です。サマータイムは国・地域によって導入しているかどうかが異なり、開始タイミングや終了タイミングもそれぞれ違っている場合があります。
サマータイムが国・地域によって異なることから、金融商品によっては複数の国のサマータイムを採用しているFX業者も存在します。ただ、多くのFX業者はアメリカのサマータイムを採用しているため、基本的にはサマータイムへの切り替わりと取引時間の変更は下のパターンが多いです。
サマータイム期間中は、標準時間よりも時刻が1時間早く進められるため、取引時間も1時間前倒しとなります。トレード前の準備を万全にしておくためにも、サマータイムと標準時間の切り替わりがあることは頭の隅に置いておきましょう。
中には、夏時間と標準時間で取引時間が変わらないFX業者や、特定の曜日や通貨ペアのみ例外となっているFX業者もあるため、個別に確認した方が安心です。
土日以外にもクリスマスと元旦は実質FX取引ができない
なお、FXでトレードができない日は土日だけではありません。
クリスマスである12月25日は世界各国で祝日とされており、東京以外のほとんどの市場が閉まります。また、取引量が多いロンドン市場やニューヨーク市場が休場となるため、日本国内のFX業者も休日、あるいは取引時間を短縮している場合があります。
また、元旦の1月1日は国内外を問わず銀行が休業となるため、トレードはできません。1月1日を除いた年末年始は取引可能ですがトレードを休んでいるトレーダーも多く、市場の流動性が低い傾向にあるためテクニカル分析が効きづらいのでトレードは控えた方が無難です。
結論として、クリスマス、元旦のどちらも通常の市場とは異なる動きを見せるリスクが高いため、トレードはしない日と考えておきましょう。
日本の祝日であればFXで取引できる
ちなみに、クリスマスは世界各国の祝日であるためにトレードできないと説明しましたが、日本独自の祝日であればトレードは可能です。
例えば、憲法記念日やみどりの日などの祝日が続く5月のゴールデンウィークは代表的な大型連休です。しかし、これらの祝日はあくまでも日本国内で定められたものなので、世界各国では祝日ではないことも決して珍しくありません。
東京市場が休みであっても、ニューヨーク市場やロンドン市場など、主要な海外市場のいずれかが動いていれば、日本国内からでも取引は可能なのです。
ただし、日本の祝日なら取引自体は可能とはいっても、普段と異なる値動きになることが少なくありません。祝日は取引量や流動性の変化によって各通貨ペアの特徴から大きく外れた動きをすることもあるため、あらかじめ傾向をチェックしておきましょう。
日本が平日でアメリカが祝日の場合のチャートの動き
一例として、まず日本が平日でアメリカが祝日の場合を考えてみます。
日本が平日でアメリカが祝日なら、東京市場は開いていますがニューヨーク市場は休場になります。するとドルに関わる通貨ペアの流動性が低下し、ドル円やドルストレートの関連通貨ペアのボラティリティが大きく下がります。
全体の取引量が落ちている状況なので、当然、チャートも激しい動きは見せません。小刻みに価格が動きレンジ相場を形成することが多くなるため、トレンドに乗ってまとまった利幅を取るようなトレードは難しいでしょう。
ニューヨーク市場が開かれていないため、重要な経済指標や政治的な発言の影響も受けにくく、チャートは日全体を通して静かに推移することが予想されます。突発的な重大事件が発生すればボラティリティが急上昇する可能性もありますが、基本的には値動きは小さくまとまりがちです。
日本が祝日でアメリカが平日の場合のチャートの動き
逆に、日本が祝日でアメリカが平日の場合も、市場がいつもと違った動きを見せることがあります。
日本が祝日でアメリカが平日なら、東京市場が休場になります。そのため、各通貨ペアの動向としてはクロス円関連の取引量が少なくなり、あまり高いボラティリティは望めません。メインの取引通貨ペアがクロス円の場合は、様子を見ながら慎重にトレードする必要があるでしょう。
一方で、ニューヨーク市場は開いているので、相場の変化はアメリカが祝日の時に比べると限定的です。
BIS(国際決済銀行)のデータによると、FX市場における通貨別の取引高シェアは米ドルだけで4割以上を占めます。米ドルとユーロで約6割なので、ニューヨーク市場とロンドン市場が動いていれば相場の動向が大幅に変動する可能性はそれほど高くありません。
ただし、ドル円に関しては日経平均株価と相関関係にあるため、東京市場の閉場中は動きが極端に鈍くなります。円安要因や円高要因となるようなニュースがあっても反応が遅くなることも考えられるので、こういった前提をもとにトレード戦略を立てることが大切です。
週末から週明けにかけて注意すべきポイント
FX市場の開場・閉場について確認したところで、週末から週明けに注意するポイントも見ておきましょう。
FX市場において、週末は休場前、週明けは休場後にあたります。このような主要なFX市場が閉場するタイミングにはトレーダーが週の半ばなどとは異なる行動を取ることが多く、相場が急変する場合があるため、以下のような点を押さえておく必要があります。
なぜこれらの点に注意すべきなのか、ひとつずつ詳しく説明していきます。
週末(金曜日)は相場変動が起こりやすい
まず第一に、金曜日は週末を前にして多くのトレーダーがポジションを決済するため、価格が予想外の動きを見せることが珍しくありません。
トレーダーがポジションの手仕舞いを行う理由としては、後述の窓開けやロスカット判定の関係から、週末のポジションの持ち越しにリスクを伴うことが挙げられます。特に、土日の間に価格に影響を及ぼすような出来事があった場合、週明けの大幅な価格変動が懸念されます。
場合によっては土日に入るまでプラスだったポジションが、週明けに一気にマイナスに転じてしまったり、ロスカットされる可能性も否定できません。
こうしたリスクを考慮すると、ポジションの持ち越しを行うなら十分な証拠金維持率を確保できるだけの資金を準備した上で、長期的な目線でのテクニカル分析が求められます。FX初心者であれば、金曜日の日付が変わる前にポジションを決済しておいた方が安全です。
週明けの月曜日は「窓開け」が起こりやすい
週明けの月曜日には「窓開け」が起きやすいことも、注意しておくべきポイントです。
窓とは、隣り合うローソク足の前日終値と当日始値との間にギャップがあったことで生じた空間のこと。そして窓の発生を窓開けといい、前日の終値よりも高く始まる場合はギャップアップ、低く始まる場合はギャップダウンとも呼ばれます。
週末に買い注文や売り注文が殺到したり、土日に世界的なニュースやイベントがあった場合に週明けの値動きが大きくなり、窓開けが発生しやすくなります。
気をつけなければならないのは、窓開けの規模が大きかった場合に損切りラインを飛び越えてロスカットになってしまうケースです。本来なら損切りでダメージを最小限に抑えられるよう対策していても、ロスカットになれば資金が一瞬で飛んでしまうため、非常に大きなリスクを伴うことになります。
一気にロスカットにかかるような窓開けはまれではあるものの、万一に備えるためにも、週末のポジション持ち越しをするかどうかは慎重に決めることが大切です。
ロスカット判定は土日には行われない
先ほど説明した週明けの窓開けとあわせて、土日はロスカット判定が行われないことも知っておきましょう。
通常、ロスカット判定は平日であれば営業時間内に行われます。しかしトレードができない土日にはロスカット判定も行われないため、仮に土日に相場が大きく変動しロスカット基準を下回った場合、金曜日の終値ではなく月曜日の始値で強制決済されてしまいます。
金曜日の相場変動や窓開けも含め、ロスカットのダメージは非常に大きなものとなるため、事前のリスクコントロールが重要です。
土日を学習の時間にあてられるかどうかで上達速度が変わる
最後に、土日のトレードできない時間をどのように過ごせば良いか、おすすめの過ごし方を紹介します。
トレードができず、チャートも動いていない土日を休日としてリフレッシュの時間にあてることも、もちろん有意義な使い方です。しかし平日はトレードに集中しなければならず、なかなか新たな知識を学ぶ時間は取りづらいため、土日を勉強にあてるとさらなるレベルアップが期待できるでしょう。
また、時間に余裕を持って落ち着いて戦略を立てるために、土日の間に次週のプランを練っておくのもおすすめです。
トレードノートで1週間のトレードを振り返る
土日にFXの学習を行うなら、最初に取り組むべきことは1週間のトレードの振り返りです。
トレードノートをもとに、以下にまとめた点について自身のトレードを復習してみてください。
トレードができない土日に勉強時間を取れば、値動きを気にすることなく自身のトレードを客観的に分析できます。トレードノートの復習は自身の強み、弱みを把握し、勝率を底上げするために役立つので、定期的に振り返る時間を設けましょう。
相場を分析し1週間のトレードプランを立てる
土日は1週間のトレードの振り返りだけでなく、次週のトレードプラン構築もできる貴重な時間です。
週明けからトレードプランを練ろうとしても、すでにチャートが動き始めている状態だとどうしても焦りが生じてしまいがちです。そのため、チャートが動いていない土日のうちにトレンド把握などの環境認識を行っておくと、感情に左右されず冷静な分析をしやすくなります。
事前にトレードプランを立てておくことは、根拠を持たずに感情的なトレードをしてしまうような局面を減らすことにつながります。実際のエントリー前にはエントリーポイントの微調整などが必要にはなるものの、トレード全体の勝率アップに効果的に機能するでしょう。
まとめ
FXのチャートは土日には動かず、トレードをすることもできません。
ただし、中東市場では土日も取引が行われていることから、週末から週明けにかけては突発的な大きな値動きに注意が必要です。特に窓開けやロスカットのリスクを十分に理解した上で、ポジションをいつ決済するかを決めることが大切になります。
また、チャートが動かない土日にこそ自身のトレードの復習や、新しい手法を身につけるための勉強時間にあてることで、トレーダーとしてのレベルアップが望めます。疲れてしまったら時には土日も完全にリフレッシュタイムにするなど、オン・オフを意識して取り組んでいきましょう。
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