FXのMTF(マルチタイムフレーム)分析とは?重要な理由とやり方を解説!

チャート分析

トレードを始めたばかりのFX初心者の方は、最初にどのような分析方法を覚えればよいのか、悩むことも多いのではないでしょうか。

FXの相場分析方法は千差万別ですが、FXを始めたばかりの初心者から経験者のトレーダーまで、間違いなく習得しておくべき分析方法のひとつが「MTF分析」です。「MTF」とは「マルチタイムフレーム」のことで、複数の時間足を見ながら相場を分析する方法を指します。

MTF分析はどのようなトレード手法やスタイルにも共通して活用できる分析手法であり、多くの熟練トレーダーたちも相場の分析時に重視している考え方です。

また、MTF分析を習得すれば、FXで利益を重ねるトレーダーになるために必須の「環境認識力」を高めることができ、トレードの腕前が確実に向上します。そこで今回は、MTF分析が重要視される理由と、実際のトレードでの活用方法をあわせて紹介していきます。

この記事でわかること
  • MTF(マルチタイムフレーム)分析で複数の時間軸を見ることで環境認識ができる
  • トレンド方向やエントリーポイントを把握しやすくなることで、トレードの安定性が増す
  • FXでは上位足の方が下位足よりも強い力を持つため、上位足から見ていくのがセオリー

MTF(マルチタイムフレーム)分析とは

MTF分析とは、短期足から長期足まで複数の時間軸(マルチタイムフレーム)を使用して相場を分析することです。

スキャルピングやデイトレードなど、取引スタイルの違いに関係なく活用可能な分析方法であり、幅広い応用が可能です。書籍やSNSで紹介されるような様々なテクニカル手法の中にも、複数の時間軸を用いたMTF分析の要素が組み込まれています。

複数の時間足を見るMTF分析を駆使すれば、単独の時間足だけでトレードをするよりも多面的に相場の流れを分析できるためです。

なぜMTF(マルチタイムフレーム)分析が重要なのか

MTF分析は、トレードの勝率を上げるために非常に重要な考え方です。

FXで安定した結果を残し続けるには、市場に参加するトレーダーの心理を読み取ることが欠かせません。しかし、1つの時間足だけを見ていると読み取れる情報が限定されるため、MTF分析によって複数の時間足でチャートを確認することで、より多くのトレーダーの動向を知ることができるのです。

MTF分析をせずに行うトレードは、「木を見て森を見ず」の状態といえます。

また、「ダマシ」に遭うリスクを下げるためにもMTF分析は有効に機能します。

「ダマシ」とは

ダマシとは、テクニカル分析などで本来予測される方向とは逆の動きをすることを指します。

基本的に、短い時間足を根拠にしてトレードするほどダマシに遭う可能性も高くなるため、エントリーの際は十分に注意しなければいけません。しかしMTF分析を行っておけば、上位足の動向を見た上で判断できるため、予測の確度を上げてダマシを回避しやすくなります。

エントリーや決済のポイントを決める際は、取引している時間足よりも長い時間足を事前に確認しておくことで、相場をより俯瞰的に見ることができるでしょう。

MTF(マルチタイムフレーム)分析で上位足から見る理由

MTF分析では、原則として上位にある長期足から順番にチャートを確認します。

長期足の定義は、「トレードスタイルに応じて基準となる時間足を決める」の見出しでも解説しているようにスキャルピングやデイトレードなどの取引スタイルによって変わります。しかしどんなスタイルでも共通しているのは、長期足の方向性が短期足の方向性よりも重要視される点です。

一般的にテクニカル分析では、分足よりも時間足、時間足よりも日足で示されるシグナルが上位に位置し、優先的に判断材料とすべきとされます。

なぜなら、長期足は短期足の集合体であるためです。例えば1時間足の1本のローソク足には、30分足2本分・15分足4本分・10分足6本分・・・というように、下位に位置する複数の時間足の情報が集積されています。つまり、長期足になればなるほど多くの短期足を内包し情報なのです。

重要視する上位足でトレンドの方向性を先に確認し、短期足で実際のエントリー・決済のポイントを絞り込むことで、トレードの勝率は格段に向上するでしょう。

MTF(マルチタイムフレーム)分析を行うメリット

MTF分析の最大の利点は、いつもより長い時間軸で相場全体の流れを見ることで、相場支配するより強いトレンド把握できることにあります。

また、長期的な視点で相場を見ることによって、目先の値動きに左右されにくくなるという効果もあります。感情的なトレードを回避できれば損失を最小限に抑え、勝率のアップにもつながるため、大きなメリットといえるでしょう。

こうしたメリットを踏まえた上で、MTF分析によって得られる効果について下の2つの観点から深掘りしていきます。

  • トレンドに逆行する勝率の低いポジションを持つ頻度を減らせる
  • 精度の高いレジサポラインやトレンドラインを引けるようになる

トレンド逆行のポジションを持つ回数を減らせる

FXのトレードでは、複数の時間足でトレンドの方向性が一致しているほど高勝率が期待できます。

例えば、普段から1時間足のみでトレードしているなら、上位足は日足や週足にあたります。この場合、もし1時間足で買いのシグナルや上昇トレンドが出ていても、日足や週足のチャートが下降トレンドの最中だと、買いポジションは大きな相場の流れに逆行することになるため推奨できません。

特に明確なトレンドが出ている相場においては、「逆張り」は勝率が低く、取るべきでない選択肢といえます。

「逆張り」とは

「逆張り」は、相場の流れに逆行してトレードする手法です。仮に相場が上昇局面なら、売りポジションを取ることが逆張りです。

上の例で理想的なのは、1時間足と日足、週足全てが同じ方向のトレンドを示しているパターンです。MTF分析でチェックした全ての時間足が同じ方向へ動いている時であれば、トレンドに沿ったポジションを持つことでトレードの安定性が大きく増すでしょう。

レジサポラインやトレンドラインの正確性が増す

レジスタンスラインやサポートライン、トレンドラインを引きやすくなり、正確性が増すこともMTF分析で得られる恩恵です。

レジサポラインやトレンドラインは、反発が予測される価格帯を知るための重要な指標のひとつです。しかし、トレンドは下位足よりも上位足の方が強く出るため、仮に5分足でラインを引いても1時間足など上位足でも反発するとは限りません。エントリーの根拠とするには不安が残ります。

一方で、MTF分析を取り入れれば同じラインであっても根拠を厚くすることが可能です。

先ほどの例で、5分足で引いたラインが1時間足や日足でも重なっているようなら、長期的な時間軸でも意識されているラインと判断できます。つまり、いくつかの時間足でラインが重なっている価格帯でのトレードなら、複数の根拠を持ってエントリーできることと同じなのです。

複数の時間足を分析した結果、同じ価格帯に重なるラインを見つけることができれば、サポートやレジスタンスとして機能する可能性は一気に高まります。利益を得るための大きなチャンスとなるでしょう。

MTF(マルチタイムフレーム)分析のやり方

MTF分析がトレード勝率アップに有効であることを確認した上で、MTF分析の具体的なやり方を見ていきます。

MTF分析の流れと手順は以下の通りです。

  1. トレードスタイルに合った時間足を軸に分析する
  2. 上位足(長期足)から下位足へと環境認識を進める
  3. 時間足ごとにトレンドが異なる場合は上位足を優先する

MTF分析において何より重要なのは相場全体の流れの把握、すなわち環境認識です。

長期足でどのようなトレンドが出ているのか、中期足が長期足と逆行しているならトレンド転換の合図なのか、あるいは長期足のトレンドの調整局面で一時的に戻しているだけなのか。こういった情報を見逃さずに精査できるようになれば、MTF分析はトレードにおける強力な武器となります。

トレードスタイルに応じて基準となる時間足を決める

まずは、自分がどの時間足に従ってエントリー・決済するのかを事前に決めることが大切です。

実は、MTF分析で使用する時間軸はメインとしているトレードスタイルやテクニカル手法によって異なります。あくまでも一例ですが、イメージとしては下の図のようになります。

例えば、スキャルピングのように分足を基準として数秒単位のトレードを繰り返すのであれば、日足以上の長い時間軸でのトレンドを確認する必要はほとんどなく、長くても1時間足までのトレンドを確認しておけば十分です。

反対に、スイングトレードのように数日~数週間を基準にして利益を狙う場合は、週足までの確認では長期的な視点に欠けるため、月足まで相場の流れを確認しておくことが必要となります。デイトレードなら、15分足や30分足を軸として考えるとバランスが保ちやすいでしょう。

最初は上図を参考に、普段自分がトレードしている時間軸と近いものを基準にMTF分析を行う時間足を決めてみてください。

 上位足から順に相場全体の環境認識を行う

基準とする時間足を決めたら、必ず基準の時間足よりも上位の時間軸から分析を行いましょう。

トレードスタイルや手法によって確認するチャートの数は異なりますが、MTF分析では一般的に長期足・中期足・短期足の3つに分類し、上位の足から順番にチャートを確認します。このうち、短期足が普段のトレードでエントリーや決済を行っている時間軸にあたります。

それぞれの時間足で確認することは以下の通りです。

  • 長期足:相場の大きなトレンドの把握、機能しているレジサポラインの確認
  • 中期足:長期足とのトレンド一致、狙う利益幅の確認
  • 短期足:長期足・中期足とのトレンド一致、エントリーポイントの決定

長期足で確認した相場全体のトレンドやレジサポライン、トレードラインは、中期足や短期足でも機能する確率が高く、真っ先に押さえておくべき情報です。そして、長期足で得た情報をもとに中期足で上位足とトレンドが一致しているかどうか、どれくらいの値幅が狙えそうかを検討します。

それまでに確認したラインなどから具体的にエントリーポイントを探るのは、普段トレードに利用している短期足です。長期足・中期足とトレンド方向が一致していれば、トレードにベストな環境といえるでしょう。

下位足を見てから上位足に移ると先入観が残り、分析精度が落ちてしまう可能性があります。そのため、MTF分析は必ず上位の時間足からチャートを確認することを心がけましょう。

時間足ごとにトレンドが異なる時は上位足を優先して見る

MTF分析の過程で時間足ごとにトレンドの方向が異なる場合は、上位足のトレンドを優先して考えます。

MTF(マルチタイムフレーム)分析で上位足から見る理由」で触れたように、長期足は短期足の集合体です。そのため、長期足で出ているトレンドほど信頼性が高く、短期足で一時的にトレンドが変化しても基本的には長期足の方向性が全体のトレンドを支配しています。

分足よりも時間足、時間足よりも日足といったように、常に上位足のトレンドを優先することで、相場の大きな流れに逆らわないトレードが可能になります。逆張りを避けてトレンドフォローを意識することで、勝率を安定させやすくなるでしょう。

普段15分足でトレードしていて、念のために週足や月足もチェックしてみたら日足以下とトレンドが違った、という場合はどのように考えればいいのでしょうか。

トレンドは大きな時間足ほど強い力を持つことは確かですが、「その日」「その週」だけ異なる動きを見せることも少なくありません。MTF分析で自分のトレードしている時間軸は明確なトレンドが出ている、と判断できたなら、大きく離れた時間足からは逆行してもOKです。

MTF(マルチタイムフレーム)分析を使った具体的なトレードの流れ

ここからは、トレードスタイルのひとつであるデイトレードを例にしながら、MTF分析を組み入れた実践的なトレード手法を説明していきます。

MTF分析は、その名称から複雑な分析方法に見られがちです。しかし、ひとつひとつの要素を分解して考えればトレードへの活用方法はいたってシンプルで、手順に沿って分析するだけでどのような手法・相場にも応用できます。

基本は3ステップだけなので、実際にチャートを見ながら分析してみてください。

  1. 長期足:全体のトレンドや意識されているラインをチェックする
  2. 中期足:長期足の情報をもとに具体的なトレードプランを立てる
  3. 短期足:プライスアクションを見ながらエントリータイミングを決める

【長期足】全体のトレンドや意識されているラインを確認する

最初に行うのは、MTF分析で最も重要となる長期足の分析です。

長期足を分析する目的は、「相場の全体的なトレンドを把握し、意識されているレジサポラインを確認すること」です。

デイトレードでの長期足には月足と週足が該当するため、まずは2つの時間足のトレンドを確認して、相場の大きな流れを把握しましょう。また、長期足のレジスタンスライン・サポートラインは下位足でも重要視されるため、ラインを引いて反発する可能性の高い価格帯をあらかじめ認識しておきます。

上図は、ドル円の月足・週足のチャートにおいてトレンドと直近のレジサポラインを描写したものです。この図の月足・週足からは、以下の点が読み取れます。

  • 現在は上昇トレンドの中にある
  • 高値は1ドル152円にレジスタンスラインがある
  • 安値は1ドル137円と127円にサポートラインがある

【中期足】長期足を参照しつつトレードプランを立てる

長期足でトレンドを確認した後は、中期足のチャートを見ながらトレードのプランを組み立てます。

まずは中期足の日足・4時間足でも長期足と同様に、トレンドの方向性を確認し、意識されている価格帯にラインを引いてみましょう。長期足と同様、トレンド把握とレジスタンスライン・サポートラインのチェックを終えた中期足が下図です。

さらに、中期足を確認しているこの段階で、「どの程度の利益幅を狙うのか」の出口戦略も検討しておきましょう。

短期足でエントリーした後の適切な決済ポイントがどの価格帯になるか、短期足のみを見て判断することは困難です。反面、中期足で大まかにでも反発しそうな価格帯を把握しておけば、短期足で決済する際の目安として使えます。

この図の日足と4時間足から読み取れるのは、以下の情報です。

  • 日足は下降トレンドの中にあり、4時間足では緩やかに戻しの傾向が見られる
  • 高値は1ドル145円にレジスタンスラインがある
  • 安値は1ドル142円と141円にサポートラインがある

そしてここまでの情報から、下のようなトレードプランの組み立てができます。

  • 長期足と中期足のトレンドが異なるため、確信が持てなければトレードを見送る
  • 中期足の下降トレンドでエントリーしたとしても、長時間のポジションは持たない
  • 売りでエントリーする場合、中期足のサポートラインである142円を目安にする

基本的に、根拠として最も厚く使えるのは、どの時間足を見ても方向性が同じで非常に強いトレンドが発生している時です。

しかし、現実の相場では長期足から短期足まで全て同一のトレンドになることはそれほど多くありません。そのため、長期足の上昇トレンド中に発生する戻しが中期足や短期足の下降トレンドにあたると考え、トレードプランを練ることも可能です。

ただし、中期足と長期足が反対のトレンドだと、判断としてはやや難しいものになります。トレードに慣れておらず分析に確信が持てない場合は、無理にエントリーせずに見送ることも大切です。

逆に、全ての時間足が同じトレンドを示している時は、積極的にチャンスを掴みにいきたいですね。

【短期足】プライスアクションをもとにエントリータイミングをはかる

最後に短期足で、値動きをチャート上で見ながらエントリーのタイミングをはかります。

エントリーする価格帯は長期足と中期足で大まかに把握していても、細かなタイミングまでは判断がつきません。そこで、短期足では長期足と中期足での分析結果を踏まえ、直近のプライスアクションを見ながら、エントリータイミングを探ります。

今回のデイトレードでは、短期足として1時間足と30分足のチャートを確認しましょう。

2つのチャートからは、現在の相場が三角持ち合い(シンメトリカルトライアングル)になっており、レジスタンスライン・サポートラインのうち、どちらかをブレイクした方向に相場が大きく動く可能性が高いことが読み取れます。

上図では三角持ち合いを用いたテクニカル手法を使用しているため、買いと売りのどちらでもエントリーを検討できます。

ここで活きてくるのが上位足の分析で、仮に中期足のトレンドと同じ方向へブレイクすればトレンドフォローが可能です。また、もし中期足とは逆の方向へブレイクしても、あらかじめレジサポラインで意識される価格帯を把握しているため、反発しそうなポイントで決済するといった戦略が立てられます。

中期足を確認した段階で複数のトレードプランを持っていれば、相場がどちらに動いてもトレードプランに沿ったトレードを進めることができるのです。

まとめ:MTF(マルチタイムフレーム)分析は勝率アップの必須技術

今回は、MTF分析のやり方や、実際のトレードでの活用方法について紹介しました。

FXでは相場のトレンドを知ることが非常に重要で、MTF分析をトレードに取り入れれば、全体の大きな流れを把握できます。全体像を掴んでおけばトレンドに逆行した勝率の低いポジション(逆張り)も避けやすくなるため、勝率は自然と底上げされていくでしょう。

また、複数の時間軸からチャートを見ることは、強いトレンドの発見だけでなく、より多くのトレーダーが意識している価格帯の把握にもつながります。

FXを始めたばかりだと、自分に合うトレードスタイルを求めて様々な手法を試すものですが、そんな時にもMTF分析を行っているかどうかで勝率や安定感には大きな差が出てきます。MTF分析はどのようなテクニカル手法であっても役に立つので、トレードにおける必須能力といえるのです。

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